「収入」と「機会」について

収入を上げたい

そりゃあ、そうですよね。同じ仕事なら、収入は高い方がいいですよね。業界内の同職種であれば、労働分配率の高い会社(収益性が高いから給与が高い訳ではない)を選びたいですよね。

但し、キャリア市場では、収入を第一に選択と決段を繰り返した結果、キャリアの頭打ちになる方が多くいらっしゃいます。

30代までは「機会」に目を向ける

20代、30代は給与の多寡よりも、自己成長機会に目を向け、選択と決断をするべきだと考えます。

「成長」に対して、もっと貪欲に、危機感や切迫感を持った方がいいと思います。

ここでいう「機会」とは、実力を身に付けること、経験の幅を広げること、見識や知見を深めること、です。

給与の高い会社は、業務がシステム化され、優れたトータル・オペレーション(属人的ではない)で高い生産性を維持しています。投資家サイドからすると評価の高い会社です。

但し、働く個人の成長機会の観点では、細分化された仕事経験が深まるばかりで、特殊な組織内での汎用性の低いスキルばかりが磨かれるため、転職市場で価値の低い「年齢と給与(+プライド)だけ高い人材(採算の悪い部品)」になりがちです。

40代でこの状態になられた方が、エグゼクティブの転職市場から真っ先に削られているのが実情です。企業にとって、成長余力のある若手を採用した方が採算が合うためです。

40代以降で訪れる「守り」の状態

キャリアにおける「守り」とは何か。

地位や名誉、実績、年収(家族の生活)、人脈など人それぞれ守りたいものはありますが、要するに「リスク許容度」が極端に小さくなるのが40代以降です。大小はありますが、40代以降でリスク許容度が大きくなる方にはお目にかかったことがありません。これは社会的生物である人間のリアルです。

スキルや経験値の高い方ほど、リスク許容度が極端に減るターニングポイントがあります。物事の成果の損益分岐点への感度が高いため、リスクとリターンの見合うROIの高い選択肢以外は無謀な冒険をしなくなります。また、費やす時間と価値によるROTの点からも、これまで積み上げてきた経験を捨て、アンラーニングできる方は希少です。

機会に対する希少性へのアンテナを立てる

開かれた機会で勝ち抜いてきたビジネスパーソン(生え抜き)であっても、年齢を経ることで目を向けるべきは、「機会の希少性」です。今の仕事をやり抜くことで、どれだけの希少性を得ることができるか。少しずつ「自分オリジナル」の職業人としての生業作品を作っていくフェーズに移行します。

資産形成でいうと、資産を積み上げる「形成期」を経て、次に目指す状態は積み上がった資産を運用して利を生み出す「運用期」へのフェーズ移行です。

スキルや経験の「運用」×「希少性」のフェーズに移行する、ということです。

エグゼクティブ・サーチのヘッドハンターは、この「〇〇さん独自の実績や経験」をシグナルやラベルとして、キャンディデイト・リストとして常に頭の中にインプットしています。

「〇〇さんは、先行投資を必要とするストック型ビジネスの事業再生フェーズに強く、◯年で◯◯億規模の事業の立て直しのプロフェッショナルです。特に癖のあるオーナーの懐に入り、組織の潤滑油として、強かな根回し型のマネジメントを得意としており、社外幹部入社でも軋轢を生まずに上手くランディングできる方です」

といったレジュメ不要のプレスメントが行われています(地方のオーナー企業は特に)。経営幹部となると、実績(生み出したギャップ)、経験された環境、スキル、再現性の有無、自社のフェーズでフィットするか、といった点で候補者評価を行なっています。

単にいい会社にいた学歴の高い人材というだけでは評価が低く、部長までは機会があるものの、経営幹部となると非常に厳しい選別が行われます。

機会に対する希少性に対するアンテナを立てるとは、自分オリジナルの経験(実績作品)を作れる機会に敏感になる、ということです。

今いる会社で、挑戦できれば勝手知ったる環境なのでベターですが、時間だけが過ぎていくようであれば、転職などで外部機会を模索することも必要です。

「条件のいい会社」ではなく、「成長機会×希少性」のある経験が積める会社という視点でヘッドハンターと相対してみてはいかがでしょうか。

但し、個々人の性格や能力、ご年齢、プライベートの状況など、機会に挑戦できるフェーズは異なりますので、慎重にご相談されると良いかと思います。

給与が高いから、ポストが高いから、それだけで人生が楽になるというのは幻想です。むしろ責任の高さと課題の難易度は連動するため、自分の適性や能力を超えた目標設定や環境選択は、ビジネス人生を終わらせてしまう可能性もあるため、市場と外部環境変化、自身のバックグラウンドをヘッドハンターと話し合い、適切な自分らしい成長戦略や方向性を定めることが重要です。

収入よりも「機会」に対する「希少性」にアンテナを立てて生きていく。

日々、精進です。